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コラム:日米GDPに歪み、勝負は7月へ=岩下真理氏


岩下真理 SMBCフレンド証券 チーフマーケットエコノミスト

[東京 21日] - 日本の1―3月期実質国内総生産(GDP)1次速報値は前期比年率2.4%増と2四半期連続のプラスとなり、内需主導の緩やかな景気回復を確認できるものとなった。

昨春の消費増税後、日本のGDP統計はエコノミスト予想を下振れる状況が続いたが、今回は事前予想(1.5%増)を逆に上振れたことを市場が好感し、株価が上昇する皮肉な結果となった。日銀にとっては、前向きな循環メカニズムが作用している状況であり、焦って追加緩和を検討する状況ではない。

なお、名目GDPが前期比年率7.7%増と大きく伸びたのは、原油安を受けて輸入デフレーターが前年同期比6.8%急低下し、GDPデフレーターが同3.4%上昇したためだ。

GDP統計の項目別詳細を見ると、個人消費が前期比0.4%増と予想(0.2%増)を上回り、設備投資が前期比0.4%増と予想(0.8%増)を下回ったが4四半期ぶりにプラスに転じた。

消費については、18日に内閣府が発表した1―3月期の消費総合指数が前期比0.1%増と弱かったのに比べると、ポジティブサプライズだ。以前、筆者はGDP推計に使う消費の需要統計である家計調査にはサンプルバイアスの可能性があると指摘。回答世帯の所得水準が平均よりも低位であれば、低所得者層や年金生活者が、日常的に使う食料品(非耐久財)や衣料品(半耐久財)の支出において節約志向を強めたことが色濃く反映され、実態よりやや弱い感触になるとの見立てだった。

しかし今回、販売統計の堅調さがようやく素直に反映される数字になったのかは判然としない。多少なりとも、季節調整の歪みはありそうだ。日本の場合、リーマンショック後のボトム期、東日本大震災はいずれも1―3月期に当たるため、そのショックからの歳月経過による影響剥落、季節調整をかけ直すことによるパターン修正の可能性がある。

それでも3月分の消費総合指数が前月比0.5%増と大きな伸びを示し、4―6月期へのゲタが0.3%ポイントあること、足元で消費マインドの改善が持続、賃上げによる所得環境の改善などを踏まえると、この先も消費の底堅い推移は見込めるだろう。その一方で設備投資は、関連統計に比べるとまだ足取りは鈍い印象だ。

<意外に小さかった「爆買い」>

他方、懸念材料は在庫動向と外需の先行き不透明感だ。今回、在庫の寄与度は0.5%と大きく、この積み上がりが将来の不安要因である。民間在庫については、今回から内閣府が4形態別計数を公表するようになったが、流通在庫の寄与度が一番大きい。この背景が国内での販売不振か、海外需要の落ち込みの影響が大きいのかまだ判別できない。生産予測調査を見る限り、自動車の生産計画が慎重になっている点には留意が必要だ。

その一方で、筆者が1―3月期に注目していた旧正月時のインバウンド消費(非居住者家計の国内での直接購入=輸出に含まれる)は2.3兆円(前期2.0兆円)にとどまった。訪日来客数の増加に比べると、「爆買い」の金額はまだそれほど大きくない。免税品対象が拡大された昨年10―12月期の伸び率に比べると、勢いは鈍化した。

可能性として、消費の販売統計において、非居住者の購入が完全に消去できていない部分もあるかもしれない。それでも外需に不透明感がある状況下、当面、日本の財輸出の増加に弾みはつきにくいと考えると、インバウンド消費によるGDP輸出の押し上げへの期待は強まることになりそうだ。

<米当局も季節調整の歪みを指摘>

一方、米国では1―3月期の弱さの捉え方について、足元で議論が深まっている。従来は、1)大寒波、2)港湾スト、3)原油安、4)ドル高、の影響は一時的な弱さと説明されてきた。ここにきて、米商務省経済分析局(BEA)とサンフランシスコ連銀が論文(18日発表)で「季節調整の歪み」を指摘した。

論文ではまず2000年代以降、1―3月期GDPは他の四半期に比べて弱く出る傾向がある点を明示。その上で、季節変動要因の勘案の仕方を調整すれば、発表されたGDP統計ほどは弱くない(具体的な試算では、速報ベースの前期比年率0.2%増がさらなる調整をかけると1.8%増になる)との結論を示した。

筆者はこれを読んだ時、日米のGDPはともに1―3月期は季節調整の歪みに苦しめられているのではないかと思えた。来週29日発表の米1―3月期GDPの改定値では、消費と外需の下振れを受けて速報値の0.2%増から0.9%減程度への下方修正が見込まれている。マイナス成長の弱さからの反動増であれば、4―6月期の2%台は可能に思えるが、足元で4月、5月の弱めの指標を受けて、その見方もぐらつき始めている状況だ。

なお消費の弱さについては、筆者は先週、米国出張して実際に暮らす人々に聞いたところ、2月の寒波は昨年よりも気温が低かったため、外出頻度が減少したこと、暖房にかかる電気代増加により、ガソリン安を享受できなかったという。

しかし、5月第3週になってニューヨークでも急速に気温が上昇し、これからの消費にはプラスとの意見もあった。素材や品質にこだわったハンバーガーの代表格である「Shake Shack(シェイクシャック)」の店先は長蛇の列だった。ハンバーガーは日本人サイズと小さめながらも、シングル5.19ドル(ダブル7.99ドル)、フレンチフライ2.95ドルで税込み計8.86ドル。食欲旺盛な若者なら3個ぐらい食べられると思うと、結構な出費だ。小売売上高全体は弱くても、こだわり消費にはお金を惜しまない姿は、心強い印象を受けた。

<6月FOMCは次なるヒント探しに>

話は戻り1―3月期のGDPの弱さを当てたと話題のアトランタ連銀作成の「GDP Now」では、4―6月期予想(19日時点)は0.7%増と依然、低い水準にとどまっている。4―6月期が本当に弱いのであれば、米国経済の構造的な弱さ(長期停滞論)への警戒感が強まり、米連邦準備理事会(FRB)による金融政策正常化への道は遠ざかることになるだろう。

それでも、7月30日発表の4―6月期GDP速報値では、年次改定が実施されるため過去にさかのぼり数字が修正される。この数字を見るまでは、米国経済の実力を判断することはできない。それまでの2カ月余りは、6月5日、7月2日発表の米雇用統計など月次の経済指標の強弱に一喜一憂する相場展開が見込まれる。足元の弱めの指標やギリシャを含めた国際情勢を踏まえても、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)は無風となりそうだ。

ただ一方で、6月FOMCの経済・物価見通しとイエレン議長会見は次なるヒント探しの機会となろう。特に市場とのコミュニケーションでは、政策金利見通しに関して、2015年は市場の見方が近付いたが、2016年は乖(かい)離が大きい。FOMCメンバーが6月に示す政策金利見通し分布(ドットチャート)は、市場を誘導する意味合いからも、非常に重要なものになる。その後は、7月発表の4―6月期の企業決算や経済指標を踏まえて、市場もFRBも米国が利上げをできる状況なのか否かを判断することになろう。よって7月が勝負のときだ。

<7月まで株高・債券高継続か>

最後に、今後の市場見通しについて言い添えておきたい。このところ、日米ともに当該期のGDP成長率よりも企業収益の伸びが上回る(実体経済の弱い印象よりも、企業収益は堅調)というパターンが続いている。相場ではGDPの低迷が続くことは債券の買い要因となり、長期金利の上昇が続かないことが株の安心材料になる。よって当面は、上昇基調にある日米株価の潮目が変化して急落する理由に乏しいと言えるだろう。

また、欧州中央銀行(ECB)を主体として中銀の緩和スタンスが維持される中では、量的緩和の枠組みの限界に一喜一憂する国際的な資金フローの変化を繰り返し、長期金利は「低位値にありながらも、ボラタイル」という状況が続くと見込まれる。米10年債では利上げを視野に入れて、さすがに2%割れの水準は遠のいたように見える。それでも7月の勝負までは、いわゆるゴルディロックス相場(株高、債券高の併存)が継続できるのではないか。

為替相場では、ユーロの巻き戻しは一服したようだ。メインテーマが欧米の金融政策、FRBの正常化とECBの量的緩和継続ならば、当然の結果と言える。引き続きユーロドルの動きには注意が必要ながら、ユーロドル(ユーロ売り・ドル買い)主導での円安は放置される可能性が高い。このまま円安基調が容認されるようだと、日本の企業業績にとっても、日銀の物価見通しにとっても都合が良い状況となりそうだ。

*岩下真理氏は、SMBCフレンド証券のチーフマーケットエコノミスト。三井住友銀行の市場部門で15年間、日本経済、円金利担当のエコノミストを経験。2006年1月から証券会社に出向。大和証券SMBC、SMBC日興証券を経て、13年10月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)
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